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あるびん・いむのピリ日記

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Swan Lake マシュー・ボーン版

職場でコンテンポラリー・ダンスをやっている同僚に勧められて、渋谷文化村のオーチャード・ホールに行ってきた。しかし・・・、分っていたこととはいえ、やはり男の踊る白鳥は衝撃だった。去年見たヴッパダール・タンツテアターの「Band neon」にも、チュチュをつけた男性ダンサーが出てきてたまげたが、ある意味こちらは群舞だから、それ以上の衝撃だった。
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バレエは苦手な分野で、子供の発表会を除けば、ちゃんとしたものを見るのは二回目である。それも、¥10,000も払って…しかも、それだけ出してもS席ではない。二回の一番奥のA席である。その上、パンフはそんなに豪華とはいえないものが¥2,000。だが、客席に入ってみて驚いた。平日の夜にもかかわらず、ほぼ満席なのである。そしてその9割が比較的若い女性。冬ソナのマダム層とは重なっていない感じなので、全くいったい、どこにこんなにバレエ好きの女性群がいるのかと思う。やはり、親が小さい頃、情操教育の一環としてピアノかバレエをさせる、というお嬢様教育?の流れが結実しているのだろうか。しかも、リピーターがとても多いらしい。最低でも¥8,000はするんである。それが、キャストが変わるとリピーターで何度も来る、というのだから恐れ入る。私なんぞは清水の舞台から飛び降りる気持ちで、大枚はたいたのだ。まあ、趣味と価値観の違い、と言ってしまえばそれまでだが…若い女性の経済的裕福さを垣間見た気もする。





そんなことはない。とても面白く、興味深く拝見した。音楽は、完全に徹頭徹尾、チャイコフスキーのオリジナルスコアが用いられている(ただし、演奏テンポはとても速い)が、筋立ては通常のクラシックバレエのそれと全く違う。さる王国の王子が主人公なのは同じだか、それ以外は全く違う。王子はジークフリートではなく、オデットも黒鳥も登場しない。大体にしてからが、白鳥は全て男性なんである。パ・ド・ドゥも男同士。しかし、脚本からは見事なくらい、興味本位なトランスジェンダー色は払拭されている。
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内容的には…なんていうか、現在の悩めるイギリス王室に対する皮肉と風刺が、相当に込められているように思う。愛を求めるけれど、女王に愛されず、愛に飢えた王子。やっとめぐり合ったガールフレンドもパパラッチの激写によって失い、自暴自棄となって死を求め彷徨う。そこに現れたのは、彼の孤独な魂を癒そうとするかのような、一羽の白鳥だった…というものである。白鳥は、いわば王子のソウル・メイトのようなものであろう。王子は白鳥に誘われるまま踊りだす。魂の解放と再生を感じた王子は、今度こそ幸せになれると思うのだが、その矢先、宮廷舞踏会で大変な事件を引き起こしてしまうのだった…
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バレエだから完全な無言劇なのであって、セリフはない。けれども、見ていれば筋は分る。抽象的なダンスの部分と、劇的な筋運びの部分のバランスが、程よく取れている。モダンバレエ、ってすごいね。なんでもありじゃん。携帯電話まで出てきたよ!要するに、舞踏が身体的言語たる役割をメインに負っていればいいわけだ。特に、ネタバレになるのでこれ以上いえないが、最終幕の第4幕は圧巻だ。交錯する情念と魂の咆哮!鍛えられた肉体群が、あますところなく、それらを描き出す。モムチャンと呼ぶにはあまりに絞り込まれた禁欲的肉体からは、宗教的解脱感すら漂う、そんなラストだった。バレエのことはよく分らない素人だが、伝えるべきメッセージはちゃんと伝わってきたのだから、マシュー・ボーンという演出家は大した人だと思った。今日のスワンはホセ・ティラードというダンサーだったが、ダブルキャストだという。見終わった後、違うキャストで、今度は表情まで見られる一階のSかぶりつき席でまた見たくなっている自分がいた。さきほど「何でリピーターするんだろう」なんていったけれど、お嬢様方、よく分りました、ごめんなさい(^^)
by cookie_imu | 2005-03-11 00:53 | 古典芸能・演劇一般