あるびん・いむのピリ日記

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『弓 The Bow(활)』

一週間程度の「小規模巡回方式」という新しい手法で、ソウルを皮切りに全国を巡回しようという試みでスタートした、キム・ギドク監督の最新作は、しかしテグ韓日劇場までも行かず、全国1643人を動員!して終了する、という不本意?な結果に終わってしまった。というわけで、輝国山人さんのサイトにも、innolifeのムービーページにも、どこにも取っ掛かりになる基本情報がなく、今回は全てCine21やFilm2.0から翻訳して、自分で調べなくてはならなくてえらい手間だった。きっと、本邦初の?ネチズンの『弓』に対する本格的レビュウなのではないかと思う・・・と言うほどの文ではないが(^^;
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主演は、『サマリア』で、その少女の持つ純粋さと、妖艶さを存分に見せてくれたハン・ヨルム(ソン・ミンジョンから改名)。そして、老人役を演じるのは、舞台人であり、『オグ』『清風明月』にも出演したチョン・ソンファン。他に、「アイルランド」で人気がブレイクした、ソ・ジソクが出演している。




釣り客を相手に、西海洋上のただなかで生計を営む老人(チョン・ソンファン)と、その庇護の下、釣り客への接客手伝いとして日々を送っている、天真爛漫な少女(ハン・ヨルム)。しかし、日々成長し、美しくなっていく彼女に、中年の釣り客たちは好色な目を向け、時には怪しからぬ行いに及ぼうとする。その度に、不埒な釣り客に向けて警告の矢を放つ(比喩でなく!)老人。少女は、老人が捨て子であったものを掌中の玉のように慈しみ育てたものであり、そして老人はいつしか、少女と結婚する日を夢見ていた。しかし・・・悲しいかな、老人にはもはや、男性の能力が失われていた。そんなとある日、父親である釣り客について、若々しく魅力的な青年がやって来た。たちまちに、青年に心奪われる少女。しかし、老人は少女にますます執着するようになり、二人の間には軋轢が生まれるのだが・・・
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とにかく、あくまでも青い大海原と、これまた青く澄み渡った空のあわいで物語は進行する。海に浮かぶ老朽化した一艘の船に住む、老人と少女・・・こんな「老人と海」ではないが、本当に海以外なにもないところで、しかも淡々とストーリーが進展していくのではとうていやり切れないのでは・・・と思われる方も多いであろうが、事実は違う。それこそ、きりっと弓に張りつめた弦のように、一本のピーンとした緊張感が漂う。それは、端的に言って「弓」が、殺傷能力を伴った、本来の攻撃的武器として使用されるからである。しかし、一方―これがこの映画の最大の特徴でもあるのだが―、弓は威嚇攻撃の次の瞬間、胴をつけて魂の飢えを癒す胡弓として機能するのである。武器となり、楽器となる・・・いわば「毒にも、薬にもなる」モノとしての弓の配剤は、まさに「天の妙薬」だと感心した。その、胡弓を言葉に代えた老人の哀切かつ毅然とした演技・・・チョン・ソンファンの他を圧倒する演技だけでも、一見に値する映画であろう。
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これはベネチアの画像であるが、それにしても・・・ハン・ヨルムは美しい。妖艶な美しさ全開と言った感があり、そこにまだ、少女的なあどけなさも残しているのだからたまらない。映画でも、その小悪魔的な蠱惑的魅力を存分に振りまいている。そこに、老残の身であっても、情欲というものを捨てきれない人間の「業」が色濃く絡みつく。父性と情欲、しかし穢れなき「娘への愛」という難しいテーマを、かなり大胆に、かついつもよりも一段と叙情的に処理している。見ようによっては『春夏秋冬・・・そして春』と『サマリア』の融合発展系、と見えなくもないが、その奥にある、「人間の生きるモチベーションとは何か」という原初的希求に応えようとする、キム・ギドクの新境地、とも取れなくはない映画だと思った。
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いつものように映像は美しい。今回は、さらに韓国二胡の名人、カン・ウンイル氏も音楽として招聘しているので、全編をリリカルで物悲しい胡弓の響きが覆う。もはや映画館での鑑賞は難しいであろうから(^^;DVDの購入をお勧めする。あ、しかし、字幕は付いていなくても全くといっていいほど問題はない。相変わらず主人公二人は全く、一言も話さないのだから・・・
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by cookie_imu | 2005-09-04 18:35 | 韓国映画・新しめ