あるびん・いむのピリ日記

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『四月の雪(외출)』

休日出勤の仕事が、どうか映画最終回までに終わりますように・・・との願いが天に届いたのか、本日初日、最終回を日比谷スカラ座にて鑑賞。夜にもかかわらず、満杯の女性観客の中であった。
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もう何も言うまでもなかろうが、監督は『八月のクリスマス』の名匠・ホ・ジノ、主演はペ・ヨンジュン、ソン・イェジンである。その他に、ペ・ヨンジュンの妻スジンにカン・スジン、ソン・イエジンの夫に『大統領の理髪師』で、ベトナム戦争に行く助手店員を好演したリュ・スンス。いい映画だと思う。私はこんな淡々とした静かなタイプの映像が好きだ。




照明技師インス(ペ・ヨンジュン)の妻、スジンは、自動車事故で瀕死の重傷を負う。仕事の真っ最中に、その悲劇的な通報を受けたインスが駆けつけた病院には、妻の不倫、というさらに大きな悲劇が待ち受けていた。休暇と偽って、不倫相手のキョンホと旅行に出ていたのだ。そして、そこには同じく人事不省に陥ったキョンホの妻、ソヨンが、やはり打ちひしがれ、呆然と座っていた。近くのモーテルに、看護のため長期投宿したインスとソヨン。二人は境遇を同じくするため、徐々に接近していくが・・・
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まず、冒頭に現われた、ペ・ヨンジュンの表情を見て、「これは只事ではないな」と、思わず居ずまいを正した。それほど、気合が入っていたのである。思わず、『八月のクリスマス』の冒頭の、ハン・ソッキュの目覚めのシーンを思い出した。そこには死への恐れ、生への願望、家族への愛・・・と、全てのものが凝縮されていたのだが、今回のペ・ヨンジュンの表情にも「生きることへの苦悩」というものの凝縮を感じたのだ。それは、例によって彼の魅力の根源でもある、凕い眸に瞬く孤独感、によるものだけでもなかった。彼の全表情、体感表出されるものから感じたのである。そして・・・その表情は、これから始まるこの映画の、重苦しいまでの生真面目さという作風を決定付けていた。
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ペ・ヨンジュンは決して小器用に演技をこなす役者ではない。どちらかというと何度も何度も、納得いくまでテイクを繰り返して、一木から塑像を削りだすように、刻苦して演技を象形しようとする役者である。その姿勢は、ことのほか説明抜きで膨大なテイクを繰り返し撮るといわれる、ホ・ジノ監督の性向によくマッチしていたのではないかと思う。そして、それでなくてもその真面目さと誠実さのため、やや生硬になりがちな彼の演技から生彩感と滲み出るような質朴な魅力を、よく引き出していると感じた。
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いったい、この映画に人は何を求めるのだろうか。ペ・ヨンジュンのファン。ホ・ジノ監督のファン。韓国映画のファン。そして、ただの映画好き。それによって視点も違うし、感想も千差万別であろうが、少なくとも、私はこの映画が芸術的な諸要素を満たし、詩的映像美を満たし、さらに静謐さをたたえ「生きることとは何か、愛することとは何か」という、永遠の命題への文学的アプローチをも満たしている、と思った。そして、それを染み入る様に、まさしく「儚く溶けてしまう春の淡雪」のように描くためには、決して話題性という理由ではなく、アジアに誇る韓国映画の「偶像」でもない、等身大の“ペ・ヨンジュン”の演技が必要だったのだ。堪え切れず、ソヨンの前髪をかきあげるヨンス―。その指先の官能的な動きといったらない!これは、上品な不器用さを湛えたペ・ヨンジュンだからこそなせる業である。そして、短くも切ない逢瀬・・・それも、暖かく誠実な、それでいてどことなく清潔な諦観を感じさせる、彼のやるせない演技が齎すものだろう。今回、ホ・ジノはそんな彼の魅力を余すところ無く引き出しているのではなかろうか、と思った。
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ペ・ヨンジュンのことばかりコメントしたが、相対するソン・イェジンの演技も、これまた素晴らしい。千々に砕ける愛のかけらを、丹念に拾い集めて禁断の愛へと転じていく、女性らしさと切なさに満ちた哀しみの表情が素晴らしい。ただ、彼女はこの映画のオープンな「結末」には不満のようだか、私はこれでよいと思った。どうしてそう思ったのか、そしてなぜ、「外出」という原題になったのか・・・は、是非映画を見て欲しい。

ともかく、この作品は派手さはないが、ホ・ジノテイストがペ・ヨンジュンの演技によって、ぎゅっと凝縮された佳作であると思う。まかり間違っても「ヨン様映画」などという、揶揄的な先入観からだけは見て欲しくない、そう思う作品である。繊細きわまるワンカットごとに籠められたメタファーと、それを活かし切ろうとするペ・ヨンジュン、ソン・イェジンの演技を確かめに、少なくとももう一度は、映画館に足を運ぼうと思っている。
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by cookie_imu | 2005-09-18 00:55 | 韓国映画・新しめ