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あるびん・いむのピリ日記

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『小さな恋のステップ』

ヘンだ、という人も多い昨初夏韓国公開の「知り合いの女」の邦題だが、私は結構気に入っている。
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監督は『ガン&トークス』などで日本でもファンの多いチャン・ジン。主演は、これまた『ガン&トークス』『シルミド』など、幅の広い多彩な演技力で認知度が広まっているチョン・ジェヨン。主演女優は、この作品で並み居る先輩達を抑え、みごと2004年度青龍賞主演女優賞に輝いた、『英語完全征服』での名演も記憶に新しい、イ・ナヨン。そのほかチャン・ジン組オール出演である(笑)




私も『スパイ・リチョルジン』以来のチャン・ジンファンなので、ビデオが出た一昨夏の終わりには速攻で見たのだが、もの静かで地味な映画であり、一向に盛り上がらず終わってしまったのでちょっとがっかりし、DVDも購入しないでいた。その後、昨夏に『拍手するときに発て』を見たり、『ウェルカム・トゥ・ドンマッコル』を見たりして、改めて監督の才能に感銘を受けたので、字幕がついたらどのようにこの映画の印象が変化するだろうかと、公開を楽しみに待っていたのである。
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ストーリーは・・・まさしく「小さな恋のステップ」そのものである。プロ野球選手のトン・チソン(チョン・ジェヨン)は、主治医から腫瘍のため余命三ヶ月、と宣言されてしまう。その上恋人からも振られて踏んだり蹴ったり。酒に弱いのに、先輩が経営している行きつけのバーに行って、飲めない酒を飲んで泥酔してしまう。そんな彼を介抱してくれたのが、そのバーのバーテンダーをしていたハン・イヨン(イ・ナヨン)だった。彼女はなんと彼の家から歩いて39歩のところに住んでいて、彼が高校時代からずっと彼のことを見つめていたという。そんな彼女と、ひょんなことから「本当の愛」を模索する彼との、奇妙な付き合いが始まった・・・というものである。
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筋立てに何か劇的な展開や盛り上がりがあるわけではない。あるとすれば、チソンの家に泥棒が入ることくらいか(笑)。ストーリーは、ほとんどチソンの独白と彼女との会話を中心にして、極めて静かに、地味ーに進行する。今でも大して分かるわけではないが、一昨年はさらに韓国語が分かるわけでもなかったので『ガン&トークス』のような劇的展開を期待した私が退屈したのも当然だったかもしれないが、字幕がついてみて内容が隅々まで分かってみると、「ああ、こんなに面白い映画だったのか!」と、大いに自分の不明を反省した。いや、実を言うと(本当です)、「実際はもっと面白い映画なんじゃないか?タダ単に自分の勉強不足で会話の妙味が分からないだけなのじゃないか?」と密かに思っていたので、レビュウを書くことは差し控えていたのだ。今となっては賢明な判断(!)だったと胸をなでおろしている(苦笑)。
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まー、要するにですね、ああでもないこうでもない・・・という、チャン・ジン監督独特のギャグ感覚でひねくった表現が満載なワケなんですよ(笑)。良くも悪くも、このチャン・ジンワールドが気に入った人でないと、ちょっとこのオフビート感覚の映画に乗り切れないかもしれない。例えば定番の「電線ギャグ」とか、もう、この作品の中では劇中劇として、まさに芸術的完成度を見せています、しかもしつこく二回も(爆)。こういった監督自らがのたもう「無意味なギャグ」―しかし、洗練を極めたナンセンス・ギャグ―の数々を味わいつくすのが、この映画の醍醐味なのである。ストーリ展開や筋立て上の盛り上がりは全く(といっていいほど)関係がない。この捏ねくり廻したシュールなギャグをしゃぶり尽くせるか・・・それが命の映画なのであると思う。
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それでいてテーマは「うわべだけじゃない・・・本当の生きる意味とは?愛って何??」と、結構深い。ギャグの中に人生の真実相を模索する・・・そんな位置付けの難しい演技を、難なくこなしているチョン・ジェヨンの演技力に改めて舌を巻いた。こういった、中間表情的な曖昧さを、程よくこなして表現できる俳優さんは、韓国でもそう多くはないのだが・・・さすがドンマッコルで素晴らしい活躍を見せてくれた演技派である。もう、文句なしの出来だと再認識した。それから・・・『フー・アー・ユー?』以来のお気に入りの女優ではあり、『英語完全征服』でのコミカルな演技も気に入っていたのに、なぜかあまりこの映画の茫洋とした演技では青龍賞受賞が納得できなくていたイ・ナヨン。字幕がついてじっくり見て、初めてその演技の繊細さに気がついた。うーん、なるほどやるなぁ・・・という感じである。奥ゆかしいんだか大胆なんだか、よくわからない現代女性の平衡感覚気質をよく表している。だけど・・・今回はジェヨンの演技を見るのに夢中だったので、彼女の小ネタを使いまくった演技を堪能するには至らなかったので、ぜひもう一度見に行こうと思っている。
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それにしても・・・である。『ダンサーの純情』はグニョンちゃん主演でもあるし、いい映画なんだけどどうしてこちらは舞台挨拶付きプレミア試写会までするのに、いくら一昨年公開だからこっちはなんにもなくて、しかも裏ぶれた(失礼)新宿ジョイシネマなんかで公開するんだろう・・・。あまりにも観客が少なくて愕然とした。少なくとも、青龍賞取ったイ・ナヨンも出ているじゃないの。映画のプリント柄のついた透明トートバッグ、っていうオマケだって結構、リキ入っているのに。。。まあ・・・吹き替えにされなかっただけでもいいのかなぁ。
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とにかく、私はキラ星のごとく散りばめられているチャン・ジン監督の小ネタ(出だしの、元カノとデートしてる場面からフォークボールの握りで彼女の手を握ってるとか^^;)を味わいつくすのと、イ・ナヨンの繊細な演技を見るために、是非もう一度、劇場に足を運ぼうと思っている。この調子では先が危ういので(^^;皆様もぜひ、上映期間短縮(ていうか平たくいうと打ち切り)になる前に、映画館にお出かけになって欲しい(苦爆)
by cookie_imu | 2006-02-05 11:23 | 韓国映画・新しめ