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あるびん・いむのピリ日記

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『娼(チャン)』

このポスターでもお分かりのように、あまりにも「その手」の映画でございます(題名からして・・・)、っていう風情がギンギラだったんで、「見てみたい」という若干の好奇心はいつもあったものの(一応、現役男子ですから^^;)レンタルビデオにも廉価版VCDにも手を伸ばせずにいた作品です。
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ところが、最近廉価版DVDが発売されているのを知り・・・、遂に!誘惑に負けて買っちゃいました(笑)。監督は巨匠、イム・グォンテク。主演は『花嫁はギャングスター』『SSU』で知られるシン・ウンギョンです



いやあ、これが素晴らしい作品だったんですねえ!まさに「名作」だと思いました。こういった私娼窟に堕ちていく女性を描いた作品としてはキム・ギドク監督の『悪い男』が有名ですが(ユ・ヒュンモク監督最新作!の『ママと星とイソギンチャク』も、ある意味そうかな…)、あちらは計略的・策略的に陥れたもの。まあこの作品だってうぶな17歳の少女が半ば騙されて苦界に身を沈めるさまを扱っているのですから、何ほどの違いがあろうか・・・と思われるかもしれませんが、縫製女工で食い詰めて、半ば覚悟の上で自ら水商売に赴いた・・・っていう「出自」が違うんですね。あちらはあくまで『悪い男』の占有愛人であるのに対して、こちらはどんな男にでも身を鬻ぐ娼婦になっていく・・・というわけです。
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もちろんこういった題材を真正面から扱っている作品ですから、「そういった」シーンはたっぷりあります。でも・・・不思議といやらしくない。性を扇情的に、淫らに扱っているわけではないんですよ。そこのところが所謂「コーリアン・エロス」とは一線を画す所だと、見ていて思いました(コーリアン・エロス作品をよく見てるわけじゃないですよ。その辺、突っ込まないでね^^)。本当に、人間の「性」が抱えている根深い“業”を、これでもか・・・という位に抉り出して見せています。でも・・・その業から抜け出せないんですねえ。業火に焼かれて身悶えしても、また「火宅」へと引きずられるようにして戻っていく・・・。その徹底した悲哀を、冴え渡るカメラワークと、練り上げられた脚本で描ききっていました。
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ことに(年譜を信じれば)撮影時芳紀24歳だった主演、シン・ウンギョンの演技の見事だったこと!まだ乙女の17歳から、身も心も荒み切った中年娼婦までを演じ分けたのですから・・・まこと、すごい女優魂です。でも・・・思わず女性「性」の中には乙女と娼婦が内在しているのかもしれない・・・とか、思っちゃいました(^^;)そういった内面を奥行き深く見せる凄みすら感じました。

また、彼女を慕って、若いときから「友人」として付き合っていく男の役を演じたハン・ジョンヒョンがまた渋く、いい味を醸し出していました。彼は決して彼女の体を求めないんです。一人の「人間」として付き合っていく。だから、彼女の身請けもしなければ逆に真夫にもならない。5年に一度くらい、居場所を探して訪ねて来ては、そのたびに彼女をバイクに乗せて野山を疾駆するだけ・・・いや、もとい、彼女の故郷を探すんですが、結局見つからない。その「距離感」が、何とも言えずにいいんです。(彼はこの後、武術演技指南に転じてしまったようで、残念です。いつの日かチョン・ドゥホンのように颯爽とした姿がスクリーンで見られるといいのですが。)

万人にお勧めできる映画とはもちろんいえませんし、女性にとっては正視に耐えないような場面も頻発しますので、是非にと申し上げることは出来ませんが、少なくとも私のように「先入観」を持たれているが故に敬遠なさっている方がいらっしゃるとすれば、それは残念なことだと思います。監督はこの後、春香伝、醉画仙、下流人生の三本しか作品を撮っていませんので・・・。
by cookie_imu | 2006-08-23 02:16 | 韓国映画・古め