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あるびん・いむのピリ日記

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日文学の夜

まあいわゆる文化祭です。助手のユニさんの出身校、テグ市内にあるケイミョン大学に行って来ました。
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こじんまりとした私の留学先大学とは異なり、テグ市内に大きなキャンパスを二つ持ち(一つは『リメンバー・ミー』や『誰にでも秘密はある』の撮影地として有名なところです。)、こちらは十年前ほどに校地新設でできたと言う、まだできたての香も残る、アメリカ式の広大なキャンパスでした。





広大で、ホテルのような教員寮から洒落たレストランのようなカフェテリア、そしてキリスト教主義の大学ですから立派な礼拝堂もあるのですが、韓国伝統文化の継承教育にも力を入れていて、ご覧のような立派な書堂(ソダン)を備えた「韓学村」まであるのには驚きでした。
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さて、肝心の「日文学の夜」ですが、二部構成になっていて、一部は挨拶などから始まり、日韓の詩の朗読、韓国人学生による日本語での弁論(プサン弁論大会で優勝した男子生徒もいて、大阪弁までペラペラなのには圧倒されました)、日韓の学生らによる歌謡大会(MISIAや山下智久の「抱いてセニョリータ」なんか歌ったんですが、これがまた上手い!)と盛りだくさん。1部のシメには先の弁論大会優勝学生がオカリナで「もののけ姫」のテーマまで披露して、やんやの喝采でした。
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しかし、何といっても凄かったのは第二部の日本語劇。劇の内容は、韓国人なら誰でも知っている昔話、「オンゴジップ(옹고집、頑固者のオン)」ですが、出演者はそれを全て日本語で演じるのです。時代劇ですので、日本語も必要なところは「~ござる」調の古語になっていましたから、演ずる学生はさぞ大変なことだったでしょう。しかし、セリフもさることながら演技も、伴奏のチャングやケンガリの息ともぴったりで、血の滲むような?練習を繰り返したであろう努力の跡が見て取れ、それは見事なものでした。
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ただ・・・「凄い」「見事な」劇だった・・・とは思うのですが、どうしても「素晴らしい」「素敵だ」とは思えなかったのは、その劇の“あまりにリアルな暴力性”に違和感を感じてしまったからです。劇の筋は、お坊さんが嫌いで、僧侶に乱暴ばかりする意地っ張りのゴジップが、一計を案じた高僧の計略によりニセモノとされ、塗炭の苦しみを嘗めさせられた挙句に自宅まで火事になり、しかし夢中で老母を救い出し、おのれの愚かしさに目覚める・・・というものです。
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最後はハッピー・エンドで終わるものの、僧侶を痛めつける場面といい、逆にゴジップが役人の下で拷問を受け、自白を強要される場面など、あまりにリアル(本当に蹴ったり、棒で締め上げていたりした)で気分が悪くなったほどでした。なんでも、このくらい迫真の演技をしないと本当の痛みや辛苦が伝わらないと言うことらしく・・・しかし、映画のようにリアルさを追求するものはともかく、演劇においては暴力性は「様式化(例えば殺陣など)」している伝統がある日本人の私の目には、目を覆いたくなるような気分になったことは事実です。李氏朝鮮時代の両班制度が齎した、人民への圧制と暴虐・・・という一面も見受けられ(「春香伝」などパンソリにも同様の場面、例えば執拗に拷問される春香・・・などあり)、このような部分に「恨」や「恨晴」を込めたり期待する・・・といった伝統は、なにも日帝時代や軍事政権に嚆矢がある訳でもなかろう・・・と思った次第でした。

全体としてとても熱心で、日本文化に対する理解や希求意欲も素晴らしく、非常に完成度も高いものでしたが、ちょっと演劇の後味が悪かったのは残念でした。なんでも近々下関学生演劇フェスティバルなるところで再演するつもりだ・・・ということだったので「暴力場面は、ソフトに様式化して演じた方がいい」ということだけは進言しておきましたが・・・。
by cookie_imu | 2006-11-11 22:55 | 韓国文化全般