昨年暮、12/3に封切りされたばかりの作品。ジャンルはアクション・コメディ。監督は、これが監督第一作となるオ・ジミョン。主演は、イム・グォンテクはもとより、キム・ギヨン監督の『破戒』、イ・チャンホ監督の『風吹くよき日』など古典的名作にも出演し、またTVドラマでも「田園日記」を始め多数の出演経歴を持ち、後には国会議員まで務めた韓国では知らない人はいない程の名優、チェ・ブラムと、同じく監督もしているオ・ミジョン、それにノ・ジュヒョンという、おっさん三人組です。
ストーリーは、やくざ東方組No.2ピョクトル(チェ・ブラム)と、No.3ケットク(オ・ミジョン)の間の序列争いに乗じて、弟分のドンパル(キム・ハクチョル)のめぐらした策略に陥って、二人は15年の間刑務所に入れられてしまう。やっと出所して直属舎弟のサムボク(ノ・ジュヒョン)と共に、ドンパルへの復讐を目指す三人だったが、逆に、これも冤罪で収監されたドンパルに、娘とその婚約者のボディガードを頼まれてしまい…というものです。
まあ、いわゆるやくざコメディなんですが、これがまたちっとも面白くないんですねぇ…。ボディガードを頼まれる、ドンパルの娘ウンジをイム・ユジンという女優が演じているのですが、これが流行歌手の役なんだけれど、歌も踊りも少しも上手くない。しかも、敵方ヤクザのボスに狙われるほどの美形とは、とてもいえない(ファンの方、もしいらしたらゴメンナサイ^^;)そのへんがまず、基本的な興を殺いでしまうんですね。
しかも、主演三人の年配の役者さん達に、全く馴染みがないのが、映画にどうも集中できない第二の理由でもあると思います。いつも見慣れている脇役たち…コン・ヒョンジンであるとか、イ・ムンシクであるとか、少し年配ならパク・ヨンギュ(アタガス社長です^^)といった馴染みの手練れたちが、だーれも出ていない。唯一知っていたのはドンパル役のキム・ハクチョルですが、いつもの見慣れた…というほどではない。でも、三人の演技はみんな、めちゃめちゃうまい。実に不思議な違和感がありました。
だから、ストーリはー陳腐でつまらなくても、この年配三人組の、巧みで味のある人情演技に、ついつい引き込まれてしまう。しかし、御年65歳になるチェ・ブラムを初めとして、アクション場面が多い映画なんですけれど、全て吹き替えなんですね、これが。もちろん、常識的に考えてこのご老体方に飛び膝蹴りや回し蹴りができるわけがないのですが、あまりにもあからさまに吹き替えをされると、見ている方は全くげんなりします。
以上のように、だれが、何のためにこのような映画に出資しているのか、全く不明なのですがそれは日本人で、まだ韓国映画やドラマに対する観覧歴の浅いワタシのような人間がそう思っているだけかもしれません。きっと、この三人が主演する!というだけで涙がチョチョ切れるほどありがたく思う人も、年配の韓国人にはいらっしゃる、そのような方々に「オレらはまだ元気だぞ!」という勇気を与える…という役割をこの映画は担っているのかもしれません。まあ、日本なら伊藤史朗と植木等が共演してアクションヤクザ物を作ったらこんな感じになるのかな…というのが感想でした。韓国映画の奥深い役者層の一面を知りたい方には、お勧めの一作です(笑)。