あるびん・いむのピリ日記

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『私たちの生涯最高の瞬間(우리 생애 최고의 순간)』

久々の韓国映画新作レビューは、昨日六本木シネマートで見て来たこの作品です。
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監督は『ワイキキ・ブラザース』などで知られた韓国女流監督の草分け・イム・スルレ。主演は女子ハンドボールオリンピック代表選手にムン・ソリ、キム・ジョンウン、キム・ジヨン、そのチーム監督にオム・テウンと、この類のスポーツ映画としてはなかなかの豪華版です。



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この映画は単なる「スポ根お涙頂戴モノ」ではありませんでした。当初はさしたる期待もしないで「どうせ、韓国女子選手がいかに優れているか、いかにに努力したかを喧伝するだけのプロバガンダ映画に近いものだろう・・・」とタカをくくっていたのですが、そこはイム・スルレ監督、一味もふた味も違いました。話の中心になるのは先述した、もはや一度は引退したような“アジュンマ(おばさん)”選手たちなのですが、そこには彼女たちがどれほど重い生活を背負っているのか、社会人チームが解散させられ、親会社の経営するスーパーの売り子をさせられる・・・などと言った厳しい人生の苦しみや哀しみを克服してハンドボールコートに立っているのか・・・という背景がきちんと描きこまれているからなのです。いやむしろ、プレーや作戦の詳細やトレーニングの辛さを描くというよりは(そういった描写もありますが)、「なぜそうまでしてまでも彼女たちはコートに戻ってきたのか」という真実を描くものであったわけです。
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そういった意味においては「スポーツ賛歌」というよりは、「人間賛歌」「女性賛歌」といったほうがいい映画かもしれません。その辺がまさに女流監督の、機微を心得た女性らしい視点である・・・という言い方も出来るかもしれません。しかも、「実話」ですからアテネで銀メダルを獲得したという事自体は素晴らしいとしても、韓国人の大好きな?金メダル、つまり「韓国人の優秀性を世界に誇れるNo.1」ではありません。つまりこれは「敗者の美学」を描く映画でもあるのです。こういった観点からもスポーツを眺め、理解することが出来るようになった・・・ということは、この映画が韓国国内でもかなりのヒットをした事から考えても、韓国社会のゆとりというか、社会的成熟度が高まってきたからなのだなあ・・・と見ることもできると思います。

このためにハンドボールのハードなトレーニングをしたという女優陣の演技は、スポーツ場面のみならず生活のリアリティーにも溢れていてなかなか見事でした。反面、オム・テウンを始めとする男優陣はまあ、「お付き合い」といった感じであまり存在感はなかったですね(唯一キム・ジヨンの夫で韓食堂のオヤジを演じたソン・ジルがいい味出してましたが)。ということからもこの映画は「元気印の女たち」の大活躍を描く映画であるのだ・・・と解釈され、それはそれで正しいとは思うのですが、行間からは「男たちよ、もっとしっかりして!」と、次第にふがいなくなっていく韓国(日本もだけれど^^;)男性に対する「エール」を送ったものである・・・と考えることも出来るんじゃないかな、とも感じました。

このように、単純な「スポーツ礼讃」モノに終わってはいない、なかなか見所のある映画ではあるのですが、若干残念なことにはそれがために「純粋にスポーツに打ち込むことの尊さ」や、「汗や努力の美しさ」を描ききる映画にはなっていなかったと見えてしまったことです。これほどの苦汁に満ちた背景を背負って努力した結果を受け止めて欲しい・・・というのはよくわかるのですが、所詮勝負事は「勝ち負け」のつく世界なのです。そこへの解釈をどう処理していくか。それがこれからの韓国スポーツ映画の課題でもあるのだろうと考えています。
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by cookie_imu | 2008-08-17 14:38 | 韓国映画・新しめ