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あるびん・いむのピリ日記

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「韓国、愛と思想の旅」 小倉紀蔵

「ハングルは、宇宙なんですね」のフレーズでおなじみの、韓国哲学研究者小倉紀蔵先生の本。
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「しにか」に連載されたエッセイをまとめたものだが、はっきりいって前作の「韓国ドラマ、愛の方程式」が楽しいドラマの読み物だったのに対して、こちらは入門というレベルはかなり超えた、朱子学や東学などの韓国儒教の哲学エッセイとなっている。正直に申し上げて、論語だけでなく朱子集註や李退渓(イ・テーゲ)の著作などをかなり読んでいないと、その「理と気の論」などは理解できないであろう。たとえば、韓国朱子学の代表的なものの考え方に、「理は発する」というのがあるが、これは根本的な宇宙的理念も変動しうる、というものであって、これをすんなり理解するのは難しい。結局は「理は発しない。気が発するのだ」と唱えた李粟谷の一派と国論を二分する大論争となり、終いには韓国の近代化を大いに遅らせた、党派抗争に繋がって行ったというのはよく知られた話である。

そういう歴史的経緯から考えても、現代韓国の思想や、韓国人の行動様式の根底にこういった朱子学的儒教思想が根強く息づいているのは間違いのないところで、前半の難解な哲学エッセイを乗り切ると、後半からはキゾー先生が青春の日々、韓国で過ごして体験した、実に理不尽ながらも人間くさい、そしてまた艶かしい話が中心になってくる。文章も散文詩的美文調となって、俄然面白くなる。「母に謝る男」など、その紀蔵流哲学の、憂愁に満ちた若さの苦悩の彷徨を綴って、白眉だと思う。でも・・・どんな美女に誘惑されても、女衒のような男に妖しげな所へつれまわされても一切、「知らぬ。」と冷厳に言い放っているけど・・・本当はどうだったんだろう・・・?。。。知らぬ。。。

大修館書店刊、¥1,800
by cookie_imu | 2005-07-07 17:52 | 韓国文化全般