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あるびん・いむのピリ日記

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現代の魔女狩りはイヤだ

巷は紀子さまが御懐妊・・・ということで、浮かれ騒いでいる。某民族主義系週刊誌などまるで、鬼の首でも取った様なはしゃぎようだ。そのこと自体を腐すつもりは全く無い。けれど・・・
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「懐妊」ということを、あたかも“女性として当然の道”というような文脈で語ってよいものであろうか。



私自身は子供が好きである。自分の子供達や、家族も愛している(自分なりにだが・・・^^;)。
だから・・・、この世の全ての人に家庭を持つ喜びや、子供を育てる楽しさ、喜びを知ってもらいたい・・・とは思っている。しかし、それと「子供を生むかどうか決める権利」は全くの別物だと思う。

有史以来、女性がもっとも悩まされ、苦しめられ、人権を貶められてきたのはこの「子供を生む」ということであろう。カッコつけてフェミニスト面をして説教を垂れるつもりは毛頭、ない。ただ、このことによって何千何百年と、営々たる時間、女性が一方的な苦しみを担ってきた、というのはまごうかたなき事実である。それを否定できる人は何人たりともいないであろう。

もちろん、子供を生むことは素晴らしい事でもあり、人間にとってこれ以上ない喜び、厳粛で神秘的な生命の誕生である・・・ということは言うまでもなく認めたうえで、である。しかし、それはそうした慶祝の認識が夫婦共々にあって、初めて成立する概念なのだ。どちらかが一方的に喜んでいるだけでは均衡を欠くことになってしまう。そして、それは女性の産み育てることへの喜びや夢、信念なくしては全く成立し得ない論理でもあるのだ。

私が危惧するのは、今回の「御懐妊」を通して、「やはり子供を生むのが良い女性」である(しかも男子!)という旧態依然たる・・・というか、前近代的な倫理道徳観念が大手を振って復活するのではないか・・・ということである。小子化が叫ばれて以来、結婚していない女性、さらには子供のいない女性は本当に肩身の狭い思いをしてきたのではないかと思う。だが、そういった選択をして独身なり、子供を生まない選択をしてきた女性には、その人なりの人生のポリシーや選択、周囲との戦いや葛藤があったのに違いないのである。端的な話、マザー・テレサが結婚もせず、子供を持たないからといって、誰が彼女を非難したというのか。

マザーほど極端な例を持ち出さずとも、周囲を見渡せば相変わらずの男社会の中で賢明にがんばっている女性はたくさんいる。そういった女性たちの実力を素直に認め、真の男女参画・共生社会を築いていくことこそが、日本の未来のあるべき姿であり、結局は少子化への大局的・抜本的対策にもなるのではなかったのではなかろうか。それなのに声高に「子作り」を敢行した・・・と称揚し、美化している。これはもう、子を持たない選択をした女性はもとより、生理的に渇望していても子供に恵まれないような女性にとっては拷問に近いような精神的苦痛を与えることに他ならないであろう。

そしてさらに、長子継承による皇室典範論議を「男系男子」論議に巧妙にすり替えようとしている。これは平塚らいてう以来、「原始女性は太陽であった」という男女平等社会の実現を、江戸時代まで押し戻すような暴論であると思う。世の中には男と女しかいないのだ。そんな女性の価値を「子生み道具」に貶めるような世の中を二度と招来させてはならないと私は思う。
by cookie_imu | 2006-02-16 22:44 | そのほかいろいろ