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あるびん・いむのピリ日記

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『礼儀なき者たち』

『拍手するときに発て』以来の、久しぶりのシン・ハギュン出演作である。いや・・・、完全に一人主演といったら『地球を守れ!』以来であろうか。これもプサンで鑑賞した。
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お相手の女優はユン・ジヘ。『春の日のクマは好きですか?』で、ドゥナの同僚役だった、ちょっと目つきの不良っぽい娘。監督はホラー映画『フェイス』を撮ったパク・チョリの2作目。
封切初日、映画館の200のハコは満員だった。



舌が短いことをコンプレックスに寡黙になった「キラー」ことシン・ハギュンが、唯一、殺人の報酬で手術をしてもらうことを夢見て社会の屑、すなわち「礼儀なき物たち」を始末していく・・・という物語で、一名「ブラックコメディ・バイオレンス」と謳っているのだが、これがもう、ギャグの出し方のセンスといい、ひねり方といい、チャン・ジンの映画そっくり!
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おまけにシン・ハギュンがほとんど声を発せず、彼の心の声(ナレーション)で映画が進行する・・・という設定のため、前半の雰囲気はまるでかの名作『ガン&トークス』のパ◎リ(失礼)じゃないか・・・というくらい、似ている。しかしハギュンが抜群に上手く、セリフも無いのに「七色の表情」で全てを語るため、言葉遊び的に散りばめられたギャグと相俟って、抜群のオリジナリティを醸し出している。
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共演者の演技がまた良い。彼の愛人となるユン・ジヘの、拗ねたようなちょっと不良っぽい目つきが、抜群に生きている。それから彼の相棒のキラー「バレエ」を演じるキム・ミンジュン(TVドラマ「プラハの恋人」「アイルランド」に出演)のカッコいいこと!すごいお洒落でキュート、ややコミカルながらも二枚目として抜群の存在感を示していた。

・・・が、映画が良かったのはここまで。後半の、お決まりの暴力団同士の抗争に突入すると、前半までのニヒルでクールな作りはどこへやら、ひたすら無意味な殺戮に次ぐ殺戮・・・という「無限連鎖暴力」に突入。しかもそのあたりの描き方が単調なため、映画は語法を失って突如、それこそ「舌足らずな」殺人の応酬に終始していく。そのあまりの急速な「失速」と、取って付けたような結末には、場内から失笑すら漏れたほどだった。

シン・ハギュンの起用と「捩れた人生の人たちの悲喜劇を笑いで描く」という監督の意気込みは良かったが、何とも尻すぼみの、後味の悪い映画になってしまったのは残念だった。だが、ハギュンの、久々の何ともいえない味のある演技を見に行くだけでも一見の価値はあると思う。
by cookie_imu | 2006-08-26 00:45 | 韓国映画・新しめ