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あるびん・いむのピリ日記

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『サイボーグだけど、大丈夫』(舞台挨拶付き)

ポスターの中に「キスじゃないのよ、充電なの」って書いてあって、イム・スジョンが空中浮揚(!?)してますね(^^)そのイメージの通りの、とっても不思議なラブファンタジーでした。
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主演はイム・スジョン(ヨングン役)、歌手で「ピ(雨)、RAIN」という名前でお馴染みのチョン・ジフン(イルスン役)。監督は泣く子も黙る?『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のパク・チャノク。




この作品の重要なネタバレになってしまいますのでごく簡単に済ませます。
 自分をサイボーグだと思い込み、世間の人と意思疎通できなくなった少女ヨングン(イム・スジョン)は、そのような人々を収容する施設で暮らすことになりますが、そこで彼女を知った青年イルスン(チョン・ジフン)と心を通わすようになります。彼女は「自分はサイボーグだ」と思い込んでいるので“充電”と“水分補給”はするのですが、食事をとろうとしません。日に日に衰弱していく彼女を何とか救おうと、イルスンの奮闘が始まりますが・・・
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・・・と、筋だけ紹介すると何ということはないのですが・・・映画に散りばめられているメタファーは、かなり難解で観客を困惑させます。あるシーンがどういう意味を持っているかは分かっても、それが前後とどのように結びつくか・・・を理解するのは難しい。語られていることの骨子は「家族愛」と「純愛」という、いささか旧態依然とした情念なんですが・・・それをここまで徹底した自己韜晦と、屈折した婉曲表現を用いなければ描出できないパク・チャノク監督という人はつくづく、因果な人だ・・・と思いました。
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にもかかわらず、私にとってこの映画を非常にチャーミングに思わせたのは、主演二人の奇抜にして素直、怪異にして純粋な演技でした。イム・スジョンの「サイボーグぶり」も堂に入ったものでしたが、驚いたのがピ(チョン・ジフン)の演技。台詞回しにはまだこなれないものを感じるものの、「人間の生の根源的孤独」といった命題や、「疎外された純粋な魂」が寄り添う様子などを、実に的確に描いていました。なんていうか・・・とってもシャイで、心根の優しい青年なんでしょうねえ・・・クライマックスのシーンではちょっとウルウル来ちゃいましたよ(^^)
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まあ・・・私的には「ファンタジー」なんだから、このくらいの「摩訶不思議さ」は許容範囲かな・・・とも思いますが、中には監督が趣味に走りすぎている!として怒る観客もいることと思います。そういった側面も、敢えて承知の上でチャノク監督は作っているんでしょうね。もう少し、見る側に「親切」であっても良かったかな・・・とは私も思いますが、このくらい凝った造りの映画もあっていい・・・とも思いますので、どっちとも言えないですね。好き嫌いがはっきり分かれるかと思います。
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いやそれにしても・・・さすがにチョン・ジフン(ピ)は凄い人気でしたねえ!もう、舞台挨拶がキャーキャーという黄色い声にかき消されて聞こえないほど・・・。辛うじて「ほんとに面白い映画ですから、ぜひ楽しんでください!」というのが分かっただけ(笑)。さすがのチャノク監督も、影が薄かったです。イム・スジョンは映画のサイボーグのイメージを踏襲しようとしていたのか、なんか妙にぎこちなく、へんてこりんな雰囲気でした(爆)

そうそう、オ・ダルスも出てたんですよ、施設に収容されてる一員として・・・。やはり「一般人と意思疎通できない」逆走男!?を演じているんですが・・・これがまた上手い!そのほかイ・ヨンミ、パク・ジュンミョン(『三叉路劇場』でのお姫様は最高でした!)などの個性派が脇を固めていて、またその描き込みが丁寧だったため、それもまた見ごたえがありました。いろいろな意味でも一見の価値はある映画だとは思いますが・・・日本ではまず、「特定の精神状態にあるものと、その収容施設に対する差別と偏見に満ちている映画だ!」とかいう非難がまず巻き起こるだろうから、なんだか上映自体が危うい感じもするなあ・・・(^^;
by cookie_imu | 2006-12-11 02:35 | 韓国映画・新しめ