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あるびん・いむのピリ日記

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『シンソッキ・ブルース』

『氷雨』『風の伝説』と、このところ興行的にはやや恵まれない状況が残念ながら続いている、しかしながら韓国を代表する演技派男優の一人、イ・ソンジェの最新主演作です。昨年暮の公開でした。
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ストーリーは、大企業の法務チームのチーフ弁護士であるシン・ソッキ(キム・ヒョンジュ)が、偶然乗り合わせたエレベーターの墜落事故により、同姓同名の国選弁護士、シン・ソッキ(イ・ソンジェ)と魂が入れ替わってしまう…というものです。
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方や、大企業の超高層ビルに豪壮なオフィスを構え、高級外車スポーツカーを乗り回し、カネにも女性にも不自由しない…という、クールなイケメン弁護士。一方は、これ以下はない、というほどぼろぼろのアパートに住み、やもめ暮らしで部屋は荒れ放題、風采の上がらない醜男で、金にならない庶民の訴訟ばかり抱えている弁護士シン・ソッキ。エレベーター事故で意識を回復したのは実は醜男シン・ソッキであり、彼の体に魂だけ入ってしまったイケメン・シン・ソッキは植物人間状態になってしまったのでした。
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この状態をなんとかしなければ…と、死に物狂いでもがけばもがくほど、シン・ソッキはドツボにはまっていきます。体は思うように動かず、金もない。かつての仕事先に行けば不審人物として追い返されてしまい、自分のオフィスにすら入れない。車も運転できず、あるのはオンボロ自転車が一台だけ…という有様。そこに、かつて勤めていた大企業の受付嬢をしていて、彼に惚れていたヒョンジュ(ソ・ジンヨン)が、その会社をリストラされてしまった不当解雇を何とかしてほしい…と依頼に来ます。かつて彼女をもてあそび、手ひどく振ったシン・ソッキですが、背に腹は変えられず、依頼金目当てで訴訟を引き受けるのですが…
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彼は彼女の訴訟を引き受けていくうちに、だんだんと貧乏生活にも慣れ、自分を取り戻していきます。そして同時に、いかにかつての自分が人間的ではなく、ただ金や地位のためだけに生きてきたか、ということを、人情味のある近所の庶民的な人々との付き合いや、彼が好きでまるで妻のように振舞う、コケティッシュで親しみやすい秘書、ミス・チャン(シニ)などによって思い知らされ、だんだんと人間性を回復していきます。と同時に、かつて自分がもてあそんだ女性であるヒョンジェに対する真の愛にも目覚めていくのでした・・・
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なんとなく、映画の雰囲気としてはハリソン・フォードの『心の旅』と、ニコラス・ケイジの『天使のくれた時間』を足して2で割ったような感じがしないでもないんですが(^^;とにかく醜男シン・ソッキを演じたイ・ソンジェの演技がもう可笑しくて、抱腹絶倒でした。この俳優さんはどんな役をやらせても上手く、コメディの腕もあることは『吠える犬は噛まない』などで証明済みなのですが、今回はキノコ型の奇妙な髪型にし、原口まさあきばりの?付け歯を着け、容貌容姿をがらりと変えていますから、まるで別人に見えます。その彼が気合十分にコミカルな演技をし(背中を丸めてひょこひょこ歩く姿や、緊張するとトイレにすぐ行きたくなる様子などは絶品)、そして、途中から真の人間性や愛に目覚めていく過程も、実にペーソスたっぷりに演じています。そして最後はジニョンとの幸せな未来が…?となるのですが…
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久々のコメディだったので、私も、爆笑に次ぐ爆笑、そして最後はちょっとホロリ…という感じで見ていました。とにかく、笑えるという点に関しては、ことイ・ソンジェの渾身の演技だけとっても一級品だったと思います。ああ、それなのにそれなのに…韓国ではまたもあっさりと三週間ほどで上映打ち切りになってしまいました。何が問題だったんだろう…と、しばらくは私も分らない気持ちだったんですが、見終わってしばらくしてから、「あっ、やっぱり素敵でカッコイイイ・ソンジェも見たかったんだ!」ということに気がつきました。つまり、韓国の観客やファンは、いつものかっこいいイ・ソンジェが、醜男のシン・ソッキに成り変る、という“一人二役”の芝居を見たかったんだと思うんです。といって、決してイケメンシン・ソッキを演じたちょい仲村トオル似のイ・ジョンヒョクの演技が悪かったわけではありません(『マルチュク通り残酷史』でも、クォン・サンウに敵対する風紀委員長を実に憎々しく好演してましたし)。そういうことではなくて、これはイ・ソンジェの主演映画ですから、やっぱりファンや観衆は、颯爽としたイ・ソンジェの姿も見て、カタルシスを味わいたかったんだと思うのです。申し訳ないけれど、そこを突き抜けて庶民的な味わいにする「人情コメディ」にもなりきれていなかった(あの、スチル公開された、クレヨンの着ぐるみで踊る場面はどこに行っちゃったんだろう…?)。その辺の中途半端さが、映画の興行的成功には繋がらなかったのではないか…と思いました。

とはいえ、イ・ソンジェの演技だけを取り上げても、爆笑間違いナシの作品だと思いますので、一見の価値は必ずあります。コメディ好きの方にはお勧めの一品です。ドラマ『ミス・キムの十億ウォンの作り方』で奮闘したソ・ジンヨンや、またまた出ました『エンジェル・スノー』の産婦人科医師、最近では『僕カノ』の警察署長さんも演じているキム・チャンワンも、先輩弁護士としていい味出して好演していますよ!(^^)
by cookie_imu | 2005-02-05 11:42 | 韓国映画・新しめ