
1992年製作、翌年公開の、アン・ソンギとカン・スヨンが主演し、『イルマーレ(時越愛)』の
監督であるイ・ヒョンスンのデビュー作。ファッション・アド・デザイナーの二人をめぐる、
芸術的苦悩、愛と別れを当時の現代アート感覚満載で描いている。
わたしの場合、何が「新しめ」で何が「古め」かというと、そこに明確な線引きがあるんです。
それは、1995年という年。映画史的にはなんの根拠もありませんが、私にとっては、
この年がハン・ソッキュが『ドクター・ボン』で主演デビューした年であり、いよいよ386世代の
胎動が聞こえる年だからです。本格的には、1998年の、ホ・ジノ監督作品『八月のクリスマ
ス』を以って、韓国新風元年、としたいところなんですが・・・
で、この作品はその境界線上にある、実に微妙な作品だと思うんですよ。でも、『ドクター・ボ
ン』が、それまでの韓国映画作品に必ずといっていいほど見られた「家族関係の重圧」や、
「南北分断問題」「恨(ハン)」といった、韓国人向けなドメスティックに受ける路線を完全に、
といっていいほ脱したラブコメとして成立しているように、この『君の中のブルー』も、ある意味
女性の自立、という点に焦点を当てて、完全にいわゆる「キムチ臭さ」を払拭している所が、
実に画期的だったと思います。この、監督の進取の気性やアート感覚は、次作の『ネオンの中に日が沈む』や、最新作で、皆様お馴染みの『イルマーレ』にも、遺憾なく発揮されていると思います。
ただ・・・、この作品に関して言えば、やっぱりちょっと早すぎたかな…というのが正直な感想。映像に凝りすぎるあまり、肝心のストーリがなおざりになり、弛緩したものになってしまっている。それに、なにが「ブルー」なんだかよく分からん(笑)。早すぎたデビュー、というべきでしょうかね、なんかちょっとできの悪いヌーベルバーグみたいな感じがしないでもない。
『イルマーレ』に至って、やっとこの監督の真価に時代が追いついた、って感じです。でも、見てよかったですよ、こういう勉強というか、感慨が得られるのですから・・・(94/12/25記入分)
と、字幕付きDVD見るまでは思っていたんですが、